地図情報会社として日本国内最大手のゼンリン(9474)。長い間、業績・株価ともに比較的好調に推移していましたが、ここ最近は利益の減少により大きく株価が下落しています。果たして今後のゼンリンの株価と配当はどうなるのか。業績推移・株価チャート・配当推移を分析してみました。
- 株価指標に割安感はない、年間の配当利回りは平均水準
- 配当性向はかなり高い水準だがDOEを目安にしている
- 業績は各メーカーの開発計画・投資に影響を受けるため不透明感がある
ゼンリンの事業内容と株価指標
はじめにゼンリンの事業内容と株価指標と配当利回りを確認していきます。
株価指標と配当利回り
株価:1,141円
予想年間配当:25円
年間配当利回り:2.19%
予想PER:70.6倍
PBR:1.51倍
2020年10月30日終値時点のデータ
PERはかなり割高です。年間配当利回りは平均水準です。
ゼンリン(9474)とは
株式会社ゼンリンは、地図情報の調査・制作・販売を行う日本の企業。日本国内で4社存在するデジタル地図調製業者のうちの1社で、地図情報会社として日本国内最大手。自社で調査した情報を基に住宅地図やGISなどを制作・販売するほか、他社に対してデジタル地図やカーナビゲーション用データなどを供給している。
ゼンリン – Wikipediaより抜粋
地図データベース関連の事業を展開しています。古くは地図の出版から、カーナビ・googlemapなどへのデータ提供、近年ではドローンや自動運転で活用されています。
ゼンリンの業績推移と株価チャート
次にゼンリンの売上・利益推移と株価チャートの動きを確認していきます。
売上高と経常利益の推移

売上・利益共に順調に右肩上がりに推移。2019年3月期は過去最高売上でしたが、2020年3月期の経常利益は63億円見通しから大きく下方修正を行い37億円に、2021年3月期も減収・減益見通しです。
株価チャートの推移
下記はゼンリン5年間の週足株価チャートの推移です。

株価は業績と同じように上昇していましたが、2018年10月頃から下落。決算内容が悪く、先行き不安が広がったところに、想定以上の下方修正で大きく下落、約2年で株価は3分の1となりました。
現在の株価は過去の株価と比較すると安値圏ですが下落トレンドから抜け出したとは言い切れず、まだまだ不透明感は強めです。
ゼンリンの配当推移と株主優待
次にゼンリンの配当金の推移と株主優待の内容を確認していきます。
配当金の推移
下記はゼンリンの配当金の推移です。年2回、中間配当(9月末)と期末配当(3月末)を実施しています。

2015年3月期:20.67円
2016年3月期:21.67円
2017年3月期:23円
2018年3月期:23.33円
2019年3月期:24円
2020年3月期:25円
2021年3月期:25円(予)
配当はやや増配推移です。
ゼンリンの配当方針は「連結株主資本配当率(DOE)3%以上を目標」としています。2020年3月期の配当性向は49.6%、2021年3月期の予想配当性向は約154%とかなり高くなっています。
2021年3月期は配当予想を出している点、DOEを目安としていることから据え置く可能性が高いですが、今後は利益が回復しないと、いずれ配当は維持できなくなります。
株主優待制度について
ゼンリンの株主優待は「自社製品」をいただくことができます。権利日は3月末で3年以上継続保有している人が対象です。
保有株式数 | 優待内容 |
---|---|
200株以上 | 2,000円相当の自社製品 |
500株以上 | 2,000円相当の自社製品と ゼンリンいつもNAVI無料利用権 |
200株保有の場合、優待利回りに換算すると約0.9%です。3年以上の継続保有条件付き、優待内容が地図なので好みが分かれるところです。
ゼンリンの決算内容と今後について
最後にゼンリンの決算内容の確認と今後について考えてみます。
決算内容を確認
2020年10月28日の決算にて2021年3月期2Q累計(4-9月)の連結経常損益は12.4億円の赤字と発表、当初上期の経常は19億円の赤字見通しでしたので赤字は想定より広がっていないと見ることもできます。
今後について
ゼンリンは国内の地図情報会社として圧倒的な力を持っています。地図は時代と共に利用方法が変わっています。現在ではカーナビ用が落ち込んでいますが、今後はスマホ向け位置情報活用アプリ向けデータやIoT関連(さまざまなモノをインターネットに接続)、MaaSビジネス(自家用車以外の交通手段を移動として捉える)の需要が見込めます。
株価の大幅下落は業績悪化に加えて株価が割高にあったことも要因と一つとして考えられます。将来的な需要は見込めますが、各メーカーの開発計画・投資など外的要因が大きく影響します。そのため、各企業の投資がどのように動くのか見えにくい部分はあります。