株式投資を行う理由は人それぞれです。売買して利益を上げる、配当金を受け取る、株主優待を受ける。今回は企業の「株主還元策」の基本の確認と配当狙い、優待狙いで気を付けるポイントを見ていきます。
- 企業により株主還元方針は様々
- 株主還元方針で株主に対する姿勢が見えてくる
- 方針は重要だが、その方針の根拠を見ることも重要
株主還元の基本
はじめに、株主還元(株主利益還元)の基本を見ていきます。
そもそも株式会社とは
株式会社(かぶしきがいしゃ)とは、細分化された社員権(株式)を有する株主から有限責任の下に資金を調達して株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益を株主に配当する、「法人格」を有する会社形態の1つであり、社会貢献と営利を目的とする社団法人である。
株式会社 – Wikipediaより抜粋
株式会社を簡単に言うと「株式を発行し」、「株式とお金を交換」、「お金を使い事業を行う」、「株式を保有している人に利益を分配する」です。これが株式会社の基本です。
株価は需要と供給
「利益が増えるだろう」という会社の株式は欲しい人が増え、株式の価格(株価)が上昇します。つまり「株価は現在の成績ではなく、需要と供給で成り立っています」。
株主還元(株主利益還元)とは
利益を適切に株主に還元することを「株主還元」と言います。株主還元は企業により方針が異なります。日本の場合、「配当金」、「自己株式取得」、「株主優待」の3つが主な還元方法です。
若い企業の場合、利益を投資に回し会社の成長に充てる場合もあります。「会社が成長することが株主のため」という意味では株主還元と言えます。
株主還元方針について
次に、株主還元方針でよく出てくる「配当金」、「自己株式取得」、「株主優待」の3つの基本を確認していきます。
配当金と配当性向とは
株主還元策で重要視される事が多いのが「配当金」です。中でも1株当たりの純利益(EPS)のうち、配当金としてどれくらい支払われているかを示す「配当性向」は目安を提示する企業も多いです。
配当性向は上昇傾向
近年、配当性向の目安はやや上昇傾向にあります。日本企業は30%~40%の企業が多いですが、欧米では50%を超える企業も多いです。配当性向を簡単に言うと「利益のうちどれだけを配当金に回したか」です。つまり、配当性向が高い=利益の多くを配当に回しているということです。
自己株式取得とは
自己株式取得は自社株買いとも呼ばれます。その名の通り、自分の会社の株式を買うことです。
簡単な例
例えば、1,000株発行している会社があり、1,000円利益が出たとします。その場合、1株当たりの利益は1円です。ここで、自己株式取得で500株取得すると発行する株式が500株になり、1株当たりの利益は2円になります。つまり、1株当たりの価値が上昇するのでこれも立派な還元方法というわけです。

※簡単にするために細かい会計基準の話などは除いてあります
自己株式取得金額と配当金額を合わせた金額を利益で割った「総還元性向」の目安を採用する企業も増えています。
株主優待制度とは
日本企業に多い株主還元策の「株主優待制度」は個人投資家に人気です。株主優待は自社製品や自社商品券、QUOカード、カタログギフトなどその種類は多岐にわたります。外国人株主や機関投資家からはやや敬遠される傾向にありますが、個人株主を大切にしている企業の中には株主優待を重視している企業もあります。
株主還元で見えること
最後に、株主還元の基本を踏まえて企業の株主還元について考えていきます。
企業による方針の違い
「配当」や「優待」は企業により大きく異なります。年1回実施しているのか、年2回なのか。配当性向の目安も異なり、優待内容・金額のばらつきは大きいです。
企業の株主に対する姿勢
各企業の配当政策や優待政策を見ることでその企業の「株主への姿勢」や「収益状況」が見えてきます。収益状況が悪化した時に配当を減らすのか、優待を無くすのか。もしくは維持するのかの対策も異なります。
還元するのが必ずしも良いとは言えない
利益の多くを還元する(配当性向が高い、総還元性向が高い)から良いとは一概に言えません。株主還元は重要ですが、利益の多くを還元すると成長が鈍くなる可能性もあります。また、株主優待をなぜ実施しているのか確認することで「今後どうなる可能性があるか」が見えることもあります。
数字で見えない部分が重要
重要なのは数値の裏側に隠されています。なぜ利益の多くを還元するのか、なぜ利益を還元しないのか。株主優待を実施する理由、実施しない理由。企業それぞれの考えがあります。株主還元は重要です、当たり前ですが還元してもらいたいので株を保有します。しかし、「積極的に株主に還元する方針だから」という理由だけで株式を保有するのは割と危険です。