個別株投資ではキャッシュ・フロー計算書にて経営状況を確認するのも重要

企業の経営状況を知る方法の一つに「キャッシュ・フロー計算書」を見るというのがあります。

今回は「キャッシュ・フロー計算書」の基本と投資銘柄の選定にどのように生かすのかを考えてみます。

キャッシュフロー計算書のPOINT
  • キャッシュフロー計算書は直接株価に影響するものではない
  • お金の流れや経営状況(倒産リスクなど)を把握することが出来る
  • 事前にリスクを把握する一つの材料となる
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キャッシュ・フロー計算書の基本

「キャッシュ・フロー計算書」とは何かを確認していきます。

キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書(キャッシュフローけいさんしょ、C/F、cash flow statement)もしくは現金流量表(げんきんりゅうりょうひょう)は企業会計について報告する財務諸表の1つである。

このC/Fは会計期間における資金(現金及び現金同等物)の増減、つまり収入と支出(キャッシュ・フローの状況)を営業活動・投資活動・財務活動ごとに区分して表示する。

キャッシュ・フロー計算書 – Wikipediaより抜粋

キャッシュ・フロー計算書を簡単に言うと「会社の家計簿」です。お金が増えたのか減ったのか、何にお金を使っているのか分かります。

収入と支出のバランス

家計では収入より支出が多くなった場合、貯金を切り崩したり借金をしたりなどでやりくりします。当然、そのような生活はいつまでも続かず、いつかは崩壊します。

企業も同じように収入と支出が釣り合わない期間が続くと、いずれ崩れていきます。

会社の家計簿は大きく分けて「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」の3つです。

個々のキャッシュ・フローについて

個々のキャッシュ・フローを確認していきます。

営業活動によるキャッシュ・フローとは

本業でお金がどれだけ増えたのか、減ったのかが分かります。

ざっくり言うと「商品を仕入れて販売し、売上から人件費などの経費を引いた金額」です。この項目がプラスの場合は本業が好調、逆にマイナスの場合は本業で苦戦しているということが分かります。

危険信号

以前の市場区分にあったJASDAQ市場では、上場廃止基準の一つに「5年連続で営業活動によるキャッシュフローがマイナス」という項目がありました。

つまり何年もマイナスが続いている会社は危険と言えそうです。

投資活動によるキャッシュ・フローとは

株、債券や資産(土地・建物)などでお金がどれだけ動いたのかが分かります。

企業は成長するために投資が必要です。そのため、優良企業・成長企業の多くがマイナスです。

理由を知ることが重要

プラスの場合、設備や土地・建物、株などを売却してお金を手に入れています。

プラスが悪いというわけでは無く、なぜプラスなのかを確認することが重要です。中には現金が不足し身を削っている企業もあります。

財務活動によるキャッシュ・フローとは

資金の調達・返済を表します。簡単に言うと「借りたお金と返したお金」です。

借り入れ・新株発行などで資金を調達した場合はプラス、借金の返済・株主への配当金の支払いはマイナスです。

他の項目と合わせて確認

成熟企業は借入を減らし、配当を出すためマイナスが多いです。成長企業は資金調達が多く、無配のケースもあるためプラスが多いです。

この項目は単純にプラス・マイナスだけでなく、他の項目と合わせて見ることが重要です。

営業活動によるキャッシュ・フローでマイナス続き、投資活動によるキャッシュフローでプラスが続いている場合、注意が必要です。

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キャッシュ・フロー計算書で具体的な投資判断

キャッシュ・フロー計算書はあくまでも会社の一面です。全てを把握できませんが、経営状況を確認することが出来ます。

安定した成熟企業のキャッシュ・フロー例

業績が安定し成熟している企業のキャッシュフローは、営業CFがプラス、投資CF、財務CFがマイナスで推移するケースが多いです。

下記は安定銘柄の代表格の一つ、NTT(9432)のキャッシュフロー計算書です。

決算期営業CF投資CF財務CF
2022/33,010,257-1,699,152-1,438,130
2021/33,009,064-1,424,532-1,689,548
2020/32,995,211-1,852,727-1,041,261
2019/32,406,157-1,774,136-584,266
2018/32,541,270-1,746,185-968,279

本業(営業CF)がプラスで増えているため、投資、財務(配当、借金返済)にお金を回しています。

利益を上げているからこそできるキャッシュフロー計算書です

経営状況が苦しい企業のキャッシュ・フロー

次に、2019年にファンド傘下に入ることが決定し、上場廃止となったパイオニアのキャッシュフロー計算書です。

決算期営業CF投資CF財務CF
2018/315,943-33,15814,264
2017/319,614-34,0091,446
2016/319,292-20,0833,408
2015/334,56436,880-55,424
2014/334,242-21,862-887

2015年3月期は事業譲渡を行い、一時的なお金を得ています。しかし、その影響により以降の営業CFが大きく下落しています。

流れや内情を見ることも重要

キャッシュフロー計算書は1期だけ見るのではなく、過去数年分の流れをしっかり確認することが重要です。

また、計算書だけでは内情はつかめないです。例えば、ソフトバンクグループ(9984)は借り入れと投資が多いことで有名です。そのため、財務CFがプラスで投資CFが大きくマイナスが続いています。

キャッシュ・フロー計算書を見る時は数値だけでなく、数年分の流れや内情を考えることが重要です。

最後に

企業の経営状況を知る方法は他にもあります。一つ一つをしっかりと理解することで少しずつ投資能力がつきます。

キャッシュ・フロー計算書をみて気になる推移をしていた企業が新株予約権を行使して株価が急落した。ということも過去にあります。

様々な角度から見ることが重要

キャッシュ・フロー計算書では株価の割安、割高はわかりませんし、株価が上がるのか下がるのかも当然わかりません。

しかし、会社の経営状況が好調なのか不調なのかを知ることができます。業績や株価だけでなく、さまざまな角度から企業をみて投資の判断をすることはとても重要です。

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